「無縁仏」進行記

 あるテーマにまつわる短編集では今月「無縁仏」というテーマに決まった。
 いつものように、テーマの言葉から、締切も間近になって、アイデアが浮かぶ。さて、締切まであと一週間ほどで、小説が書けるだろうか。
 このままいくと、締切までに書けそうにない。締切に間に合わないと、結局、未完成のまま放置してしまいそうなので、ここにその小説の進行を書き記していこうと思う。

 設定は「無縁仏」ということで、墓地が舞台になる。というのも、私が「無縁仏」という言葉から浮かんだのが、海のみえる丘陵に、だだっ広い(東京ドーム200個分ぐらい)のメモリアルパークの光景だったからだ。
 東京から2時間ぐらいの場所で、郊外よりもさらに遠い場所にある。バブルのころには高級住宅街(あるいは別荘街)として計画されたが、頓挫して、記たるべき高齢化社会に対応すべくメモリアルパークに変更された。
 経営母体は最寄駅の鉄道会社のグループ企業である不動産会社となっている。
 
 清掃などの作業は地元のパートのおじさん、おばさんが受け持ち、供養などはやはりグループ企業の葬儀屋が取りしきり、各種宗教の流儀に応じる。
 実際に、このメモリアルパークは、生前の購入者が八割を超える。持ち主である不動産会社が、首都圏のネットワークを使って、かなり強引な営業活動をおこなっているからだ。
 生前の購入者は、事前に葬式の参列者から墓石のデザインまで、その後について仔細に決めておけば、一切合切の面倒をこのメモリアルパークがみてくれる。

 海の見える丘陵に広がる傾斜地に区画整理された墓地用の土地が階段に升目を書いたように並ぶ。

 北西側からA、B、Cと名づけられた区画の一番最後、駅から曲がりくねった坂を上りきったところにある入園口の東側に
管理事務所とならんで、一戸建ての家ぐらいのピラミッドがある。有名な建築家がデザインして、雑誌にも取りあげられたことのある墓碑。無縁仏用の墓碑だ。