嘘にまみれた世界から
逃れ
長い坂を上って
たどり着く
きみの部屋の
あかりが
懐かしい

まるで
暗い海に向け
静かに回転する
灯台のあかり
のように
遠く暗い森から
小さな羽を動かして
光に向け
やってきては
飛び込んでいく
甲虫のように

ほんとうは
なにもいらない
ほんとうは
なにもいらない

わたしは
くるくると
光のまわりで
らせんを描く
飛び込もうとするたび
硬いガラスが
わたしを拒否していく

その理由を
わたしは理解することがない
ガラスの存在を
理解することがない
ずっと

わたしはまた
嘘にまみれた世界に
出かける
すべてが嘘ならば
嘘は存在することがない
だから
どこかに君が
いるはずだ