選挙があるそうです

 職場で、「お客さんが自分でバーコード通して、自動販売機みたいに、お金払うようにすればいいのに」と冗談で言っていたら、アメリカのスーパーでは本当に普及し始めているらしい。
 これを聞いて、ああレジ打つ仕事から人々が解消されて、ハッピーだなあ、と思う人は幸せである。
 本当は、これでレジ打ちの仕事をしていた人たちが失業するということを意味する。
 レジ打ちをしていた人のなかで、別の仕事につけた人は、それまでその仕事に付いていた人から仕事を奪う。
 別の仕事につけなかった人は、お金が儲けられないので、その分、お金を使わなくなり、結果、モノが売れなくなり、景気は停滞し、さらに人を減らそうと企業は思う。
 今日、選挙広告が新聞に挟み込まれていたので、ざっと目を通してみたけれど、いつものことながら、ウンザリした。私は、いちおうこれでも、よい大人になろとう努力しているつもりで、だから選挙には行く。けれど、納得して投票したことなど一度もない。
 いま一番切実で、身近な問題は、雇用、だと思うのだが、なんだか、立候補するみなさんは関心が薄いようだった。
 私の職場の大半はアルバイトと契約社員で占められている。おそろしいことに、社員の大半は若く、経験が浅くて、一方、アルバイト(パート)の一部と契約社員は年齢が高く、経験があって、仕事ができる。若い社員よりも、テキパキしていて、気が利いて、お客との対応もよく、仕事を任せられる。若い社員のなかには、いったことをちゃんとやらない人もいて、とうてい仕事を任せられなかったりするのだが、立場はこの人の方がアルバイトよりも上である。
 とはいえ、仕事はそんなに高度ではない。工夫する余地はたくさんあるが、やらなくてもいい、といえばやらなくてもいい。簡単に言えば、来たモノをただ並べるという仕事をしていてもいいのだ。長年コストをかけて、優れた社員を育てるよりも、アルバイトを安く雇って、簡単に仕事させる方が儲かる。
 そして、あと何年かすれば、それすら、お客に機械を操作させて済ませるようになるだろう。
 あんまりはっきり書くのは気が引けるが、いまの40代、50代は悲惨だ。なんらかの利点がなければ、リストラされてしまったら、まともな社員になることもできない。
 そして、それは、30代の私のほんの少し先の未来でもある。
 どんどん人を解雇し、時間単位の薄給で働かせて、それで景気回復したとして、いったいどうなるのだろう。仕事に誇りを持てないようにして、なんの人生だろう。
 30代のフリーターも多い。学校を出たけど、就職先が見つからないといって、アルバイトしている人も多い。
 普通に生活するのも大変になってきて、結婚し子供を育てるということも難しくなってきている。子供がふえず、老人が増え、しかし、老人は雇用しない。それが、現実だ。
 自分のことは自分でする、私はなんとかやっていこうと思うが、それがどこまで通用するのか、さっぱり見当がつかない。
 政治家はどう思っているんだろう、と思う。
 選挙広告を読んでも誰も答えてくれない。