李寧煕「もう一つの万葉集」

 もう退院しまして、職場にも復帰しました。だから、もとに戻っても良いのですけど、なんだか、こちらに移動すると宣言した手前、(両方?)暫く使ってみます。

 たまたま手に取った本が大当たり。

 今日は李寧煕「もう一つの万葉集」文春文庫を紹介しましょう。

 すごい本です。衝撃でした。

 僕はどちらかというと、ナショナリズムが嫌いな人間ですが、しかしながら、古代日本の文学代表ともいえる万葉集が韓国語で書かれていた、という事実には、あんたの親は本当の親じゃないんだと言われたような、なんとも自分のアイデンティティを揺さぶらる気分になりました。

 でも、よく考えてみれば、中国を中心として、朝鮮半島を通じて、日本に文化がやってきたわけで、そこに古代朝鮮の人々や文化が日本に影響を与えていないわけがない。

 というか、中国人、朝鮮人(韓国人)が日本に来なかったわけがない。
アメリカ合衆国の成立と似ているかも知れませんね。ヨーロッパ、特にイギリスからやってきて、インディアンを追い出し、植民地から独立してできた。日本も、中国や朝鮮からの移民や南方から移り住んだ人々が、蝦夷を追い出して、植民地のような感じだったのが、独立した。どうもそれが大化改新らしいです)

 というより、古代の日本は朝鮮とほとんどいっしょのようなものだったことが、万葉集から分かるのです。えー! と思うなら、この本を読んでみましょう。

 いままで、難読難解で、解釈不可能だった万葉集の歌が、韓国語だと思えば、すっきり読めてしまうのです。

 しかも! 

 エロ!

 すごいです。この本は、最初に日本が朝鮮の植民地のようなもの(あるいは属国か、あるいは辺境)だということの驚きのあとに、万葉集額田王(女性です)の歌は、彼女と天武天皇との仲を天智天皇が引き裂いた(額田王天武天皇はもともと夫婦だったのを無理矢理自分の妻にした)にもかかわらず、彼女と天武天皇が密かに不倫していたことを歌に込めているというのです。

 彼女が歌った万葉集の歌とはこんなものです。

「麻具を廻せよ 大股の麻具を識らせよ 来たれ 麻具立ちにけりに 行き来せむ 幾度」
(麻具をお廻しなさい。貴方のその大股の麻具を識りたいのです。さあおいでなさい。麻具が立っているのですから、行き来しましょう、何回も)

 麻具とはとうぜん、男性の股に付いている棒状のモノです。

 日本が韓国(朝鮮;百済)の属国だったかもしれないなどということに感じる劣等感など、吹き飛んで、唖然としながら、読み進み、何ともいえない気分になり、結局、笑っていました。

 すごいぞ、額田王


 あと、面白いのは、韓国語の音に、漢字を当てているところです。万葉仮名というのも、暴走族が「夜露死苦」と書くみたいに漢字を意味ではなく、音を漢字で表すのですが、これを韓国語でもやっているということです。しかも、万葉集は日本語と韓国語と、それから漢文が混じり合ってできている(二重、三重の読みができる)らしいのです。

 いやあ、おもろいです。古代史にはまりそうです。