透明思考

もしかすると一生気づかないのかも知れない パンドラの箱の中にはなにが入っているのか / 青酸カリと猫が居て 神が サイコロを振るのを 待っているのか / それとも カブトムシが居て 私のこの痛みを あなたに気づいてもらえる日を 待っているのか / 言葉…

ゆっくりと 死んでいく / ひび割れた コンクリート 抜け落ちた 猫の毛 / 捨てられた マネキン つぶされた 自動車 / 彼らは一度でも 愛されたことが あっただろうか / 破れた ソファの背もたれ 塗装の剥げた ケイタイ / ゆっくりと 死んでいく / 雨に濡…

何度も逃れようとしたが 運命は 私を捕らえ 放さなかった / 私が行なったこと 行わなかったこと 言ったことば いわなかったことば あらゆることが とりかえしのつかないものとなって 私や誰かの記憶の底に 沈んでいった / そういえば 私はネクタイをしてい…

おれがほしいのは おまえの肉体だろうか それとも おまえの欲望だろうか

私の身体に 穿たれた穴は 何ものも 破壊することなく そこにある / やがて大きな鳥が飛来し 穴をついばむ 空を蔽うほどの 大きな翼の下で 私は死を向えている / わたしに さみしさを くださいませんか わたしに かなしさを くださいませんか / 空虚な穴を…

外があり 内がある / 鬼に豆をなげる 豆をなげる前に 鬼がいたのは 外か 内か / 外と内を分断するために 白い線を引け 赤いバケツに石炭を入れ そのまままっすぐに 白い線を引け / その線が消えるまで 我々の 鬼ごっこは続く

君と 僕のあいだにある 何枚かの皮には 幾億かの細胞が敷き詰められ 君をつつみ 僕をつつみ 隔てている / 細胞の ひとつひとつには 神が戯れに 記した命令が キリキリと ねじられ 折りたたまれている / この 切ない想いが 細胞のなかのつまらぬ戯れの結果…

今日は下の本を読みましょう。

その笑顔が 僕だけのためにあると 僕だけに向けられたものだと 思ってもいいですか / 乾いた空気を通過して 君の笑顔は 僕を気弱な独裁者へ 変貌させる / なぜ 僕だけのものではないのか なぜ 僕だけのものであってほしいのか / 君の笑顔は 乾いた空気を…

不適当なところに句読点をうってみよう。「このこ、とから考えると人間の個、体が鏡像に向かっ、た時に示、す強い悦びの中には、自、我の統合と。性的、な活動の両方が。混在、していると推定される。すな、わち人間はこの、時期に鏡。像としての自、分を理…

連続していると思っていた それが突然途切れたときに 私は生まれた / 断片の集合となった 時間 そのひとつを つまみあげ 息をふきかける / たちまち時間は溶けて 消えてしまう 私の手の中には何も残らない / ただ 私だけが 残る

物語はつねに われわれとともにあり われわれは 物語によって生かされている / 残酷で気まぐれな神に 翻弄され 無数の無関係の事象から 物語の花束を つむぐ / 「私」という名の物語が私を支えている 神が脳にあたえた もっとも重要な 機能:私 / 痛みす…

もうすぐ お月さまも とまるよ と娘がいった / 赤信号で停車して 空を見る 白い丸い昼間の月が 浮かんでいた / お月さま、ついてくるよ どんどん、どんどん ついてくるよ / ねえ、どうしてついてくるの? どうして どんどん、どんどん ついてくるの? / …

詩なんか簡単だ 目の前のことを そのまま書けばいい 酒を飲む そばを食う 黒い服を着る 笑う なにも考える必要はない ただ生きていることを示せばいい / ただ生きていることを示せばいいのだから 詩なんか書く必要はない 飲みたいだけ酒を飲み 食いたいだけ…

グーテンベルクは何をしたのか ほんのわずかな特権階級のものだった 魔物を 人々に開放した / 機械の力を得た魔物はつぎつぎと増殖し 夜といわず 昼といわず 人々を虜にし 惑わせ 生活を破壊していった / ボヴァリー夫人は私だ! / 寝ませんか、そろそろ

三歳になる娘が、もっていたお菓子をみせて おとうさん食べる? ときいた。 食べる とこたえると 娘はうれしいような 困ったような顔をして 手にもった自分のお菓子を ほんのちょっと 米粒ほどの大きさにちぎって。 / あげたいけど、あげたくない。 あげた…